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冷静と情熱を兼ね備えた凡人

とあるカフェのプリンの味が衝撃的だった話

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先日、とあるカフェに行った時のこと。

 

その店は駅から徒歩2分でアクセスも良く、NYの下町にあるカフェをイメージしたという店内は開放感を感じるオープンキッチン。全体的にウッド調、いかにもインスタ映えしそうな雰囲気でとてもおしゃれ。二階まである広々とした店内には女性客はもちろん、お年寄りや外国人など幅広い客層に人気のようだった。

 

事前リサーチによるとこのお店はプリンが有名らしく、14時〜販売されるそれは1時間で売り切れてしまうこともあるらしい。現在11時。打ち合わせの内容的にも14時にかぶりそうだしそんなに人気ならば食べてみようということに。

 

とりあえず飲み物をとレジに行くと、すぐ横にとても大きな四角いパイが二種類並べてあった。レジ脇というこの配置ずるいよね、買うよね。小腹の空いていた私は迷わずアイスコーヒーとチョコレートパイをチョイス。

 

 

そう、このチョコレートパイが凄かった。

 

 

トースターで温められたパイにナイフを入れるとサックリと軽やかな感触が手に伝わってくる。間違いない、これは絶対に美味しいやつだ、食べなくても分かる。はやる気持ちを抑えつつ慎重に切り進めていく。

 

サクリ、サクッ、サクッ、……?!!

 

パイの半ばに差し掛かった途端、怒涛の勢いでチョコレートが溢れ出てきた。すごい、なんて量なんだ。これ板チョコで換算したら2枚分くらい使ってる?だとしたらパイも含めると相当なカロリーだなこわいな美味しそう。思わず見惚れているとチョコレートの下に黄色い何かが隠れていることに気付く。

 

カスタードだった。

 

バターが香るサックサクなパイ生地にたっぷりのチョコレート。それだけでも相当魅力的なのにここでまさかのカスタードをぶち込んでくるなんて信じられない。なんてことしてくれたんだ。こんなの反則じゃないか。

 

正直、ここから先はあまり記憶がない。

一口食べた私はカロリーを忘れ、二口食べた時には仕事を忘れていた。そう、仕事で来ているはずなのに私は無心で食べ進めた。気付いたら空だった。時空を超えた美味しさ。まさに究極のチョコレートパイだった。

 

 

しかし忘れてはいけない。

この店の一番人気の商品はプリンである。

 

 

二番手(もしくはそれ以下)であるチョコレートパイでこのレベルだとしたら一番人気であるプリンは一体どんなことになっているのだろう。私のような平凡な舌では処理しきれない情報量かもしれないと不安がよぎるほど、まだ見ぬプリンに期待は高まる一方だった。

 

 

12時半、100席近い店内がほぼ埋まる。

 

13時50分、空席が目立つようになる。

あれ、もうすぐ14時だけど食べないで帰る人も多いのかな?と思ったが、店内をよく見ると空席だと思っていた席には何かしらの荷物が置いてあることに気付く。もしや…

 

下を覗くとそこにはレジへと続く長蛇の列が出来ていた。しまった!!出遅れた!!!そう気づいた時には時すでに遅く、慌てて降りるも既に20人程並んでいた。なんという人気ぶり。圧倒されている間にも続々と人は増え続ける。こ、これは期待できる…!!!

そんななか、ふと目の前に並んでいる推定21歳女子大生2人組の会話が耳に入ってきた。

 

女子A「この行列やばくない?」

女子B「やばいよねー。なんかプリン並ぶためにお昼前から店入って席取っとくひともいるらしいよー」

女子A「ええー、まじか!!!」

私(「ええー、まじか!!!」)

 

ディズニーランドのアトラクションでさえ並ぶのを躊躇してしまう私にとって、プリンの為に並ぶ人々がいるとは驚きだった。今並んでるけど。

 

女子A「それはプリン通の私も期待高まっちゃうなー」

女子B「プリン通なんだ(笑)他にどこのプリンが美味しいの?」

女子A「あのさー、これみんなに勧めてるんだけど、結局一番美味しいアップルパイってさ、ケンタッキーなんだよね」

女子B「え?ケンタにアップルパイとかあったっけ?」

女子A「そう思うでしょ。ケンタはアップルパイの単品がなくてセットにしかついてこないんだよ!」

女子B「単品ないんだ(笑)」

女子A「だからさ、ケンタのアップルパイ食べたい時はセット頼まなきゃだからお腹空かせていくんだー」

女子B「えーウケるねそれ(笑)」

 

 

 

私(「あれ、プリンの話は……?」)

 

 

 

女子大生の巻き髪を眺めつつ、無事にプリンをゲットした。

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固めのタイプのプリンのようだ。ウッド調の店内と、レトロな皿にのったどこか懐かしい風貌のプリンはTHE・インスタ映えである。

 

私の向かって右側のカウンター席の女子2人がいつまで経ってもプリンに手を付けず狂ったように自撮りしているのも分かる気がする。分かる気がするんだけど、あのさ、さっきから結構上の角度から自撮りしてるけどそれだと背景に私入っちゃってないかな。上から撮ったほうが顎がシュッとして写るもんね、分かる分かる。だけどさ、ちょっと考えてみて欲しいんだけど、こっちは低めのソファー、そちらは椅子高めのカウンターだからその絶妙な手の角度でいくと多分ってか確実に私写っちゃってると思うんだよね。つーかチラッと見えたんだよね画面。まあ、そんなに写るの嫌なら私がちょっと上体逸らして避ければいいんだろうけど、なんかそこまでしてやる必要あるかなっていうかそこまで隣でパシャパシャパシャパシャやられてると逆にあえて写ったろかっていう気持ちになりそうなんで黙ってプリン食べますね。

 

 

少し弾力のあるプリンを慎重にすくい、全神経を舌に集中させて口へと運ぶ。

 

それは衝撃的な味だった。

 

 

 

 

そう、

 

 

 

 

 

 

びっくりするくらい普通

 

あまりに普通過ぎて思わず「わ、びっくりするくらい普通ですね…」って心の声漏れちゃったよ失礼かよ。普段こんなこと言わないんですごめんなさい。

 

いやいや待て待てそんなはずはない。あんなに並んでたんだめちゃくちゃ美味しいに決まってる。そう、そうだ、きっと私疲れてるんだ。疲れてるからちょっと味がよくわからなくなっちゃってるだけだきっとそうだ。

 

で、もうひと口。

 

 

 

 

 

 

うん、これは、

至って普通のプリン。

 

 

 

 

いや美味しいよ?普通に美味しいよ?ごめんね勝手に期待し過ぎちゃってキミは悪くないよ大丈夫ほんとに美味しってば普通に美味しいよ普通に。

 

そう、普通に美味しい。以上。

 

 

え、なにこれ。……なにこれ(二回目)。

なんだろうな、なんていうんだろうなあこの気持ち。キャバクラでNO.1嬢を見たときの「え?あれがNO.1?なんつーか…普通じゃね?」っていう、NO.1というからには相当美人なんだろうなって思ってたけど意外とそうでもないんだ、へえ〜…。という感覚に近いといいますか。知らんけど。

いやこれが仮にキャバクラの話ならいいよ。見た目が普通だとしてもトークがめちゃくちゃ上手いとかすごく連絡マメとかさ、それなりの理由あるはずだから。というか超絶美人よりむしろ見た目は割と普通な子の方が意外とNO.1っての多いよね。あれ、なんの話?

 

 

あまりの衝撃に一瞬話が逸れました。

 

 

特筆する点は皿くらい、という、昔ながらではあるけれどごく普通なお味のプリンを口に運びながらこのお店の戦略性はすごいな思った。

 

プリン自体はオープンから売ることも出来るはずだ。現に多くの店はそうしている。それを『14時〜』と販売時間を限定することであえて行列を作らせ、その行列を見た人が気になってまた並ぶ…という人間の心理を上手く利用している。これはバンドワゴン効果というらしい。

「バンドワゴン効果」とは行動心理学の用語で、ある製品や事柄に対し、大勢の人がそれを支持している場合、その製品や事柄への支持がよりいっそう高くなるといった現象のことをいいます。

バンドワゴン効果とは | ビジネス・心理学用語集:意味・解説など | ビジネス心理学

外から店内の様子がよく見えるようガラス貼りにしてあるのもお洒落のためではなくむしろこの行列を通行人にも見せる為だろう。

それらを踏まえると「販売開始から1時間で売り切れてしまうこともある」という口コミも店側の戦略(あえて売り切れるよう少なめに生産し話題を作る)のように思える。

外から見える店内、入ってすぐのショーケース、14時からの限定販売、「1時間で売り切れる」という口コミ。全て計算され尽くしている。

 

おしゃれでインスタ映えする店内と料理、限定販売で希少価値の高い(ように思える)デザート。プリンのために行列が出来るという話題性。

そこに集まるインスタ世代の若年層の女性客。彼女たちはニーズに合ってさえいれば店側が頼まなくてもSNSで勝手に宣伝してくれる。

 

つまり、

 

 

 

 

このお店の素晴らしいところ。

それはプリンではなくマーケティングとチョコレートパイでした。現場から以上です。

 

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